2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

倭国の正体『愛しき人よ』① 

愛しき人よ。私は大学生の身でありながら、日本古代史の研究に誘われ、その時代に関する幻想が夏雲のように広がり、次から次へと想像が湧いて来て、何か文章にしてしまわないと、眠れなくなってしまった。そこでその幻想を『幻想・邪馬台国』として綴ること…

風外禅師の生涯

昔から「何々さん」という愛称で呼ばれて来た僧侶がいる。弘法さん、西行さん、一休さん、呑竜さん、良寛さん・・・・。これから語る風外慧薫を知る人は多分、風外をその一人に加えて、『風外さん』と呼んでいるに違いない。 風外禅師の画像 ■戦乱の世の出生…

大津皇子物語『朱鳥の悲劇』

「同人誌評」 3作品 石井富士弥 『讃岐文学』に「宿縁の将」(石原利男)があります。この作者は既に社会人として幾重畳の人生をおくられ功成り遂げ、悠々と宿願の文学に三昧境を求めているようですが、拡散不実態化した〈歴史小説〉も、こういう闊達な世界…

幻の花 ~ 第三十六章 幻想小町

さて、今まで小野小町の一生を記述して来て気づいたことがある。それは小町の生きた平安時代が、実に平成時代に似ているということである。戦乱の終わった後の平和な時代、まさに平安時代だったからである。この時代は諸々の天変地異や飢饉や事件があったに…

幻の花 ~ 第三十五章 随心院小町

延喜四年(九〇四年)春、小野小町は鞍馬山の尼寺、如意山青蓮寺から都の南、山科の小野の里に戻った。理由は、鞍馬の尼寺では悲しい知らせばかりで、耐えきれなかったからであった。父母や姉と一緒に暮らした小野の里での楽しい日々が忘れられず、この思い…

幻の花 ~ 第三十四章 尼寺小町

寛平七年(八九五年)秋、小町は鞍馬山の尼寺、如意山青蓮寺に戻った。住持の信法尼は小町が戻って来たので、とても喜んだ。小町は寺にある姿見の井戸で、寺から離れていた自分の顔を映し、骨と皮ばかりの痩せ衰えた自分の容姿を見て、びっくりした。関寺の…

幻の花 ~ 第三十三章 関寺小町

寛平七年(八九五年)七月七日、七夕の日のことであった。宇治の僧が歌の上手な老婆がいるという噂を聞いて、小坊主たちを連れて関寺近くにやって来た。村人に訊きながら老婆がいるという山陰の里を訪ねると、辺りには飄々たる冷風が吹いていて、夏草も花を…

幻の花 ~ 第三十二章 鸚鵡小町 

寛平四年(八九一年)小町は、かって四の宮、人康親王に仕えていた盲目の蝉丸が、曽祖父、小野岑守が創建した関明神にて琵琶の演奏をしているというので、思い出の逢坂の関に出かけた。尋ね尋ねして逢坂山の麓に行くと、人康親王からいただいた琵琶の名器を…

幻の花 ~ 第三十一章 墨染め小町

仁和二年(八八六年)初夏、都に戻った小町は、紫野の雲林院に訪問し、遍昭と素性に会った。そこは花山元慶寺の別院になっていて、遍昭親子が管理していた。遍昭は光孝天皇と若い時から親交があったので、光孝天皇から花山僧正と呼ばれ、宮廷からも重用され…

幻の花 ~ 第三十章  南海道小町

仁和二年(八八六年)、小野小町は新年を迎えると直ぐに、寒さが厳しいというのに、讃岐国に向かって出発した。まずは阿蘇山の北嶺に鎮座する阿蘇一宮神社に立ち寄り、初詣をした。そこは孝霊天皇の時代に創建されたという歴史を誇る神社で、楼内の奥に立派…